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2008年12月18日

「ペットボトルキャップを回収してワクチンを寄付」について

「ペットボトルのキャップを集めてリサイクルしたお金でワクチンを世界の国に送ろう」

このところ、耳にすることが増えてきたこの話題。
昨日も沖縄県内の方から電話で問い合せをいただきました。
「ペットボトルキャップを送る運送料が高いので、そちらで回収などしていませんか?」
どうやら集め始めたのはいいものの、実際にリサイクルしてもらうには工場に送るための送料がかかるということに後で気が付かれたようです。

沖縄県内ではペットボトルのキャップを買い取ってリサイクルしている業者はいないため、県外のリサイクル業者を探し、送料をかけて送る、ということが現時点では前提となります。たとえ県内に業者がいて、自分で持ち込んだとしても、ガソリン代はかかります。


「エコキャップ推進協会」という団体によれば、
キャップは400個で10円になります
ポリオワクチンは1人分20円
20円で1人の子どもの命が救えます

エコキャップ推進協会HPより


つまり800個でようやく一人分のワクチン。
送料は地域や発送方法によってまちまちですが、45リットル袋に7kg、3500個入ったそうですので、容量1リットルあたり約80個。
ゆうパック140サイズ(約10リットル)に800個入ると仮定。同一県内に送ったとして、1500円以上かかります。
20円の寄付をするために、送料がなんと1500円!
送るのを辞めて、送料分をそのまま寄付したら、75倍のワクチンが買えます。
県外に送ることを考えたら、、、ぞっとしますね〜


そこで思い出したのが、かなり以前からある「プルタブ回収運動」です。
「ペットボトルキャップを回収してワクチンを寄付」について
1995年1月4日 沖縄タイムス

2003年、当会の事務局長が沖縄タイムスに連載していた際に、『缶のプルタブを集めて車イスと交換』という話について書いた記事があります。最近のペットボトルのキャップ回収にも共通する点があるので、紹介したいと思います。

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『地球号に生きる ~くるくるっと~』
「物ごとの裏がわ」 「プルタブを集める前に考えて」

最近、ちょっと気になっているのが、「プルタブを集めたら車イスと交換してくれるって本当?」と相談を受けるようになったこと。

缶飲料のプルタブは、もともとは缶を開けると飲み口から切りはなれるタイプでポイ捨てしやすく、プルタブを動物が飲みこんだり人がケガをするなどの問題がありました。
福祉関係の人を中心に、「プルタブもリサイクルできるから活かそうよ」と呼びかけられ、集まったプルタブを売ったお金で車イスを買う活動が広がりました。

でも、13年前にはプルタブは切りはなれないように改善され、空き缶ごと集めてリサイクルするようになりました。
9年前に、那覇市社会福祉協議会から「各家庭にあるプルタブを最後の回収として福祉まつりで集めたい」と私が所ぞくする「沖縄リサイクル運動市民の会」に相談があり、祭り会場で集めました。

朝から夕方までの7時間で集まったのは約1トン。そのプルタブを仕分けする作業はとても大変でした。
祭が終わった次の日も、またその次の日も作業は続きました。
みんながプルタブを入れてきたビニールやボトルなどの容器はたくさんのごみとなり、プルタブを引き取ってくれる回収業者もあまりの量に,
「手間がかかりすぎて大変。引き取ってもお金とかえられる状態でないものが多い」と困った顔をしていました。
集めたものが、その先どうなっていくのかを良く調べ、引き取った側に苦労を押しつけることのないような仕組みを考えたい。
そして、車イスを買う目的なら、わざわざプルタブだけを集めるのも考え直しましょう。

車イス1台をもらう目的で「プルタブ700kg~800kg集めてダンボール箱に入れ、県外の会社に送りたい」という相談もあります。
車イスとプルタブは直接交換するのではなく、プルタブの素材であるアルミを回収する業者が重さに合わせて買い、そのお金で車イスを買うのです。
アルミ700kgはプルタブだと約150万個。
そのために消費される缶飲料の代金を1缶110円×150万個で計算すると、なんと1億6千5百万円もの大金になります。
8万円の車イスだったら2千台も買えるお金です。
缶飲料は多くの資源とエネルギーとお金をかけて作られ、売られています。

車イスを買うために消費が増えるのも変な話ですよね。また、700kgのアルミを県外に送ると運送料がかかります。
沖縄にもアルミ回収業者はいるので、買い取ってもらえます。
その場合、プルタブより空き缶ごと集めたほうが効率的です。


(省略)

2003年8月3日沖縄タイムス

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「捨てるのはもったいない」
そういう純粋な思いからエコキャップ運動は生まれましたが、ペットボトル飲料がコンビニや自動販売機でいつでもいくらでも買えること自体が非常に贅沢で、一度使っただけでもうリサイクルしてしまうことがもったいないです。
ワクチンのためにキャップを集める→キャップのためにペットボトルを買う、、、なんてことになったら目も当てられません。

「リサイクル」と「ワクチンの寄付」は、どちらも大切ですが、別に考えるべきことですね。
そもそも、キャップはペットボトル1本につき1個しかありません(当たり前だ)から、ペットボトルを800本というと、大小様々ですが1本150円としても、12万円!1人分20円のポリオワクチンで計算すると、6000人分。
800名の人が年に1回でもペットボトルを買うのを我慢して、その分を寄付すれば、6000人の命が救えます。

「リサイクルできるから」と簡単に耳にしますが、ペットボトルもいつのまにかリサイクルされているわけではありません。送料、エネルギー、税金、、、たくさんの資源が必要であり、CO2の排出を伴います。ペットボトルキャップをリサイクルすべきであれば、個々バラバラに集めるのではなく、社会システムとして効率的なルートを作ることが必要です。

今回のお問い合わせは、学校で出るゴミのリサイクルを考えたいということから始まったそうです。
それなら、まず便利な使い捨て社会についてみんなで考えてみる、というのはいかがでしょうか?





参考:
ペットボトルキャップの回収をやめる理由(武蔵村山市ボランティア・市民活動センター)

ペットボトルキャップと私(後編:ペットボトルキャップを運ぶ)


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Posted by くるくるリサイクル at 11:01│Comments(5)スタッフより
この記事へのコメント
このことは、私もどこかで書きたいと思っていました。
エコキャップ推進協会は善意で始められたものと思いますが、使い捨ての免罪符を与えているような気がしますね。ペットボトルのリサイクル工程でキャップは自動的に選別されてリサイクルされますが、キャップだけ集めるのは運送のためにかかるCO2やコストを考えると、理にかなったリサイクルとは言えないと思います。こういう運動が「偽善エコロジー」などと揶揄されることになる。
キャップ集めるより、ペットボトルを一本買ったつもりで7人分のワクチン代を寄付する方が正しい!全国に蔓延するキャップ集めに対して、沖縄からペットボトル一本節約してワクチンを寄付する運動を提起したらどうでしよう。インパクトありそうです。
Posted by ヒゲ at 2008年12月18日 12:47
ヒゲさん
コメントをありがとうございます。

>ペットボトルのリサイクル工程でキャップは自動的に選別されて
>リサイクルされますが、キャップだけ集めるのは運送のためにかかる
>CO2やコストを考えると理にかなったリサイクルとは言えないと思います。

そうですね。

暮らしの中では見えてこないサイクルの中でごまかされている部分があるような気がしますね。
出来るだけ、その「見えてこない」部分に思いをはせながら、
使い捨てではない社会をみなさんと作っていきたいものです。

リサイクルとワクチンのことを一緒の問題として考えると、落とし穴があるような気がしてなりません。

スタッフより。
Posted by 沖縄リサイクル運動市民の会(スタッフより) at 2008年12月19日 11:13
いつもお世話になっております(よね?)、ヒゲさん。

以前、公共広告機構のCMで、SMAPの草薙君とチェ・ジウさんが「エコキャップ」とか何とか言っているのを耳にして、「こんなことテレビで言って大丈夫?」とWEB検索してみたら、けっこう広がっていたんですね。
沖縄でもジャスコなどが回収の呼びかけや回収ボックスの設置なんかを始めてて、「またもやプルタブ伝説の復活か〜」と思っていました。

スタッフ同士でもいろいろ話をしていたのですが、さすがヒゲさんの表現は簡潔で的を射ててわかりやすいです。
ぜひどこかで書いてください!

「キャップを集めるより、1本飲むのを我慢して寄付!」
その方が6000倍ワクチンを寄付できて、ゴミもCO2もゼロ、もちろんリサイクルコストもゼロ。
Posted by マキシ at 2008年12月30日 01:48
現在自分達は、エコキャップを地区と友達とで集めております。現在はコンビニなどにも大量の協力をしていただいております。
未来のを救うのは自分達です!
Posted by 未来の命 at 2010年02月07日 07:42
エコキャップ回収事業(運動)を沖縄本島全域・周辺離島、宮古諸島、八重山諸島、大東諸島、奄美群島にまで活動範囲を拡大して、運動を最大限に強化すべきです。エコキャップが燃えるごみとして処理されている自治体が在る為、大変懸念しています。
Posted by 名無しさん at 2022年05月25日 01:32
 
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