
2023年09月21日
ペットボトルってエコ?ボトルtoボトルのお話
9月の出前講座も無事終了しました〜
今月は7校15クラスで「買い物ゲーム」を実施しました。

「買い物ゲーム」では必ずペットボトルについても触れますが、最近、清涼飲料メーカーが「ボトルtoボトル」に積極的に取り組んでいますね。
「100%リサイクル素材使用ペットボトル使用」という商品を各社競って発売し、盛んに「エコ」で「サステナブル」なイメージを打ち出しているようですが、さて本当かな?と思って調べてみました。
まず「ボトルtoボトル」とは、ペットボトルをリサイクルして、またペットボトルに戻すことです。
「ペットボトルがペットボトルになるなんて当たり前でしょ?」と思っている方も少なくないかも知れませんが、ボトルtoボトルは(水平リサイクルとも言います)、すでに20年前には帝人が開始したものの、数年で事業撤退してしまうなど、紆余曲折がありました。
さて現在、その割合はどれくらいになっているのでしょうか?

・PETボトルリサイクル推進協議会年次報告書
https://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/backnumber.html
長年10%以下でしたが、昨年やっと20%に達しました。つまり、10本のうち再びペットボトルになったのは、ようやく2本になったところです。
確かにこの「20%」という数字、以前に比べればかなり上がったんですが、アルミ缶と比べればまだまだです。
アルミ缶はすでに7割前後が「カンtoカン」。アルミ缶はほとんどアルミ缶に戻ります。回収後の買取価格が高く、リサイクル率は90%以上を誇り「リサイクルの優等生」と呼ばれることも。

もちろんPETボトルも80%以上がリサイクルされています。ただ、これまでは多くがシート(食品用パックやトレーなど)や繊維類になっていました。
「リサイクルされてるならいいんじゃない?」という方もいるでしょう。
なぜボトルtoボトルが重要なのかというと、繊維やシート類にリサイクルされたPET樹脂は質が下がるため、回収率は低く、リサイクルもほとんどされていません。つまり、PETボトルの8割は1回リサイクルされただけで、ほとんど燃やされているということです。
スチール缶はどうでしょう?
スチール、つまり鉄は車、建材、鉄道、船舶までさまざまな用途で大量に使われます。そのため再び缶に戻す水平リサイクル率は低いものの、「何度でも何にでもリサイクルできる」と言われるほど。リサイクルの歴史も長く、選別も磁石で簡単にでき、洗浄も容易で、リサイクルコストも安く済みます。ちなみにガラスも何度でもリサイクルできる素材です。

一方、PETボトルの「ボトルtoボトル」は、技術的にもまだまだハードルがあります。まず色付きPETや他のプラ素材が混ざると除去が困難なため飲料用には使えなくなります。分子レベルで異物を取り除き元のPETに戻す「ケミカルリサイクル」もありますが、まだ開発途上で技術を有する企業も少なく、コストも高くなってしまいます。(各社コストを下げようと開発に取り組んでいます)
現在、メーカー各社が華々しく目標値を掲げているように、このままボトルtoボトル率が上がり、技術の進歩でコストや環境負荷も下がり、「優等生」のアルミ缶やスチール缶に追いつくならいいのですが、まだまだ課題はあるようです。
https://shokuhin.net/25620/2019/04/03/inryou/inryou-inryou/
https://shokuhin.net/73127/2023/04/09/inryou/inryou-inryou/
では、なぜ各飲料メーカーは、コストのかかるボトルtoボトルに取り組み始めたのでしょうか?
背景には原料(石油)の高騰と、海洋プラスチックごみ問題で広まっている悪いイメージを、エコな話題で何とか払拭したいという意図がありそうです。
また、飲料メーカーがそこまでPETボトルにこだわる理由は、やはり容器の価格自体がアルミ等より安いこと。そして、もうひとつは売れること、つまり消費者自身が選ぶからだと言われます。キャップがあるので少しづつ飲めること、透明で中身も見える点などがその理由のよう。
最近急激に増えたPETボトルコーヒーは、これまで缶コーヒーを好まなかった若者や女性に受けヒットしているそうです。
飲料メーカーとしては、一番コストがかかる分別や回収費用は消費者や自治体に任せておいて、リサイクルのエコなイメージをアピールして売上を伸ばせればOKというのが本音でしょう。
最後に、忘れてはならない海洋プラごみ問題です。
軽いPETボトルは他の素材に比べ環境中に流出する割合が高く、生態系への影響も大きいです。確かに回収率は高いですが、ペットボトル使用量は増え続け、国内で年間248億本も販売されているので、たった1%でもポイ捨てされ風に飛ばされ海に流れ出るとすると2億4800万本!これが分解されずに数百年もの間、溜まり続けていくわけです。
たとえ将来的にリサイクルコストが下がったとしても、海洋プラ問題を何とかしない限り、「エコ」で「サステナブル」と呼べないでしょうね。
今月は7校15クラスで「買い物ゲーム」を実施しました。
「買い物ゲーム」では必ずペットボトルについても触れますが、最近、清涼飲料メーカーが「ボトルtoボトル」に積極的に取り組んでいますね。
「100%リサイクル素材使用ペットボトル使用」という商品を各社競って発売し、盛んに「エコ」で「サステナブル」なイメージを打ち出しているようですが、さて本当かな?と思って調べてみました。
まず「ボトルtoボトル」とは、ペットボトルをリサイクルして、またペットボトルに戻すことです。
「ペットボトルがペットボトルになるなんて当たり前でしょ?」と思っている方も少なくないかも知れませんが、ボトルtoボトルは(水平リサイクルとも言います)、すでに20年前には帝人が開始したものの、数年で事業撤退してしまうなど、紆余曲折がありました。
さて現在、その割合はどれくらいになっているのでしょうか?

・PETボトルリサイクル推進協議会年次報告書
https://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/backnumber.html
長年10%以下でしたが、昨年やっと20%に達しました。つまり、10本のうち再びペットボトルになったのは、ようやく2本になったところです。
確かにこの「20%」という数字、以前に比べればかなり上がったんですが、アルミ缶と比べればまだまだです。
アルミ缶はすでに7割前後が「カンtoカン」。アルミ缶はほとんどアルミ缶に戻ります。回収後の買取価格が高く、リサイクル率は90%以上を誇り「リサイクルの優等生」と呼ばれることも。

もちろんPETボトルも80%以上がリサイクルされています。ただ、これまでは多くがシート(食品用パックやトレーなど)や繊維類になっていました。
「リサイクルされてるならいいんじゃない?」という方もいるでしょう。
なぜボトルtoボトルが重要なのかというと、繊維やシート類にリサイクルされたPET樹脂は質が下がるため、回収率は低く、リサイクルもほとんどされていません。つまり、PETボトルの8割は1回リサイクルされただけで、ほとんど燃やされているということです。
スチール缶はどうでしょう?
スチール、つまり鉄は車、建材、鉄道、船舶までさまざまな用途で大量に使われます。そのため再び缶に戻す水平リサイクル率は低いものの、「何度でも何にでもリサイクルできる」と言われるほど。リサイクルの歴史も長く、選別も磁石で簡単にでき、洗浄も容易で、リサイクルコストも安く済みます。ちなみにガラスも何度でもリサイクルできる素材です。

一方、PETボトルの「ボトルtoボトル」は、技術的にもまだまだハードルがあります。まず色付きPETや他のプラ素材が混ざると除去が困難なため飲料用には使えなくなります。分子レベルで異物を取り除き元のPETに戻す「ケミカルリサイクル」もありますが、まだ開発途上で技術を有する企業も少なく、コストも高くなってしまいます。(各社コストを下げようと開発に取り組んでいます)
現在、メーカー各社が華々しく目標値を掲げているように、このままボトルtoボトル率が上がり、技術の進歩でコストや環境負荷も下がり、「優等生」のアルミ缶やスチール缶に追いつくならいいのですが、まだまだ課題はあるようです。
https://shokuhin.net/25620/2019/04/03/inryou/inryou-inryou/
https://shokuhin.net/73127/2023/04/09/inryou/inryou-inryou/
では、なぜ各飲料メーカーは、コストのかかるボトルtoボトルに取り組み始めたのでしょうか?
背景には原料(石油)の高騰と、海洋プラスチックごみ問題で広まっている悪いイメージを、エコな話題で何とか払拭したいという意図がありそうです。
また、飲料メーカーがそこまでPETボトルにこだわる理由は、やはり容器の価格自体がアルミ等より安いこと。そして、もうひとつは売れること、つまり消費者自身が選ぶからだと言われます。キャップがあるので少しづつ飲めること、透明で中身も見える点などがその理由のよう。
最近急激に増えたPETボトルコーヒーは、これまで缶コーヒーを好まなかった若者や女性に受けヒットしているそうです。
飲料メーカーとしては、一番コストがかかる分別や回収費用は消費者や自治体に任せておいて、リサイクルのエコなイメージをアピールして売上を伸ばせればOKというのが本音でしょう。
最後に、忘れてはならない海洋プラごみ問題です。
軽いPETボトルは他の素材に比べ環境中に流出する割合が高く、生態系への影響も大きいです。確かに回収率は高いですが、ペットボトル使用量は増え続け、国内で年間248億本も販売されているので、たった1%でもポイ捨てされ風に飛ばされ海に流れ出るとすると2億4800万本!これが分解されずに数百年もの間、溜まり続けていくわけです。
たとえ将来的にリサイクルコストが下がったとしても、海洋プラ問題を何とかしない限り、「エコ」で「サステナブル」と呼べないでしょうね。
Posted by くるくるリサイクル at 11:32│Comments(0)